【取材】無農薬・有機栽培で甘みと旨みぎっしりのニンジンを生産!太陽熱消毒と大型加工機導入で生産性が大幅に向上。海外展開への挑戦 株式会社日南トマト加工(日南町)

鳥取県西南端に位置し、清らかな水と豊かな自然に恵まれた日南町。ここでトマトや人参、生姜などの栽培から、ジュース・スープ等の加工・販売までを一貫して手掛けているのが株式会社日南トマト加工です。

同社では安心・安全な食を届けるため、化学農薬や化学肥料を使わない無農薬・有機栽培への本格移行を進めてきました。しかし、除草剤を使用できないことによる「手作業での膨大な草取り労力」と「加工処理」が現場の大きな負担となっていました。

そうした中、同社は鳥取県の「持続的な賃上げ・生産性向上支援補助金」を活用。「畝(うね)立て同時マルチ張り機」の導入による太陽熱消毒手法の確立、加工工場の「大型フードプロセッサー」導入、さらに「自社ホームページのリニューアル」を実施しました。生産性の飛躍的向上によって現場の負担を激減させ、確実な賃上げと台湾をはじめとする海外販路の開拓へと繋げている取り組みについて伺いました。

補助金申請のきっかけ:無農薬栽培における「膨大な草取り労力」からの脱却

―― 補助金を申請する前、社内で一番困っていた課題は何でしたか?

内田社長:自社農場で人参などのジュース用野菜を作る際、数年前から無農薬・有機栽培(無農薬・無化学肥料)へ本格的に切り替えたのですが、除草剤を使えないため「雑草との戦い」が想像以上に深刻でした。

これまでは、機械で畝(うね)を立てた後に、人間の手で透明なビニールマルチシートを被せる作業を2〜3人がかりで行っていました。そして何より、芽が出た後に生い茂る雑草を手作業で抜く作業に、毎日1日がかりで追われていたのです。農場スタッフは2名しかおらず人手も全く足りないため、本来行うべき他の農作業や適期管理に手が回らない状態が続いていました。

―― この補助金はどのようなきっかけで知り、応募されたのでしょうか?

内田社長:地元の商工会さんからご案内やチラシをいただいたのがきっかけです。最低賃金の引き上げが決まり、従業員の賃上げを実施せざるを得ないタイミングでもありました。「賃上げを実施することが要件であり、それに合わせた設備導入を支援してもらえる」という内容が、まさに自社の現状とぴったり合致したため、活用を決定しました。

計画の策定や申請にあたっては商工会さんに親身になって相談に乗っていただき、スムーズに手続きを進めることができました。

設備導入でのエピソード:画期的な「太陽熱消毒」と加工現場の効率化

―― 今回の補助金で、具体的にどんな設備やシステムを導入しましたか?

内田社長:主に3つの設備・システムを導入しました。

1つ目は、トラクターに取り付ける「管理機用マルチャー」です。畝(うね)立てと透明マルチの敷設が機械1台・1人作業で同時にできるようになりました。これにより「太陽熱消毒(太陽熱処理)」という殺菌・除草手法を本格導入しました。土中の病原菌や雑草の種を太陽熱で死滅させた後にマルチを剥がして種を蒔くことで、草がほとんど生えてこない環境を作ることができます。

2つ目は、加工工場で使用する「大型フードプロセッサー」です。以前使っていた機械は小型で処理能力が小さく、何台も並べて手作業で少しずつ投入していたため大変な手間がかかっていました。大型化により、1人でも一度に大量の原料をスピーディーに処理できるようになりました。

3つ目は、「自社ホームページのリニューアル」です。従来は外部委託で自由な更新や情報発信が難しかったのですが、新サーバーへ移管したことで自社でタイムリーに商品情報や栽培の様子を発信・変更できるようになりました。

実際に導入されたマルチ管理機と大型のフードプロセッサー

―― 新しい設備や手法を導入したことで、現場はどう変わりましたか?

内田社長:「太陽熱消毒」の導入により、これまで丸1日がかりで行っていた手作業の草取りがほとんど不要になりました。マルチを剥がした後の畝には雑草の種が残っておらず、通路部分に少し生える程度です。その通路も小さな管理機でサッと耕すだけで済むため、現場スタッフの労力と労働時間が激減しました。

加工現場でも、フードプロセッサーの大型化によって作業時間が大幅に短縮され、他の仕込み作業や発送業務に手を回せるようになりました。

工場に併設された店舗にはトマトジュースを中心に、自社製造のにんじんジュースやジンジャーシロップなど様々の商品が並ぶ

導入の成果と「賃上げ」への還元:社内環境の改善と価格転嫁

―― コスト高騰が続くなかでの「価格転嫁」や販売面での取り組みはいかがですか?

内田社長:資材費や燃油代が高騰したことを受け、昨年ジュース類や加工品の販売価格の値上げを行いました。値上げによって売上が落ち込む不安もありましたが、長年ご愛飲いただいているリピーターのお客様や、お中元・お歳暮用として何箱もまとめて注文してくださるファンの方々に支えられ、大きな売上減少もなくご理解いただくことができました。直接お電話やFAXで定期注文を下さる根強いお客様の存在が非常にありがたいです。

―― 賃上げ実施後、社内の雰囲気や従業員のモチベーションはどう変化しましたか?

内田社長:最優先課題であった賃上げを果たせたことで、農場や工場で働くスタッフのモチベーション向上につながっています。また、何より「過酷な手作業の草取り作業」や「手間のかかる加工作業」から解放されたことで、現場の身体的・精神的負担が大幅に軽減されました。浮いた時間を他の収穫作業や丁寧な管理作業に充てられるようになり、農作業全体のクオリティ向上という好循環が生まれています。

(株)日南トマト加工自社農場

これからのビジョン:日南町から世界へ!台湾・海外市場への挑戦

―― 5年後・10年後の御社のビジョンや今後の展開について教えてください。

内田社長:鳥取県内や日本国内での販売はもちろんのこと、今後は海外への販路拡大にさらに力を入れていきます。

実は県の支援事業を通じて、台湾の高級スーパー(裕毛屋)への輸出がスタートしています。町長や商工会長とともに現地へ渡り、試飲販売を実施したところ、非常に高い評価をいただきました。新しく開発した「トマト甘酒」なども現地商談で大好評を得ています。

日本国内では競合となるトマトジュースも多いですが、海外では当社の安全で美味しい加工品が強い差別化要素になります。日南町の豊かな自然が育んだ農産物の魅力を、台湾をはじめ世界へ届けていきたいと考えています。

県内の経営者へメッセージ

―― 最後に、設備投資や賃上げに踏み切れずにいる県内の経営者へメッセージをお願いします。

内田社長:「最低賃金の引き上げや人件費の上昇は、中小企業にとって避けては通れない課題です。しかし、賃上げを単なるコスト増と捉えるのではなく、このような支援制度を活用して『現場の生産性を高める設備投資』をセットで行うことが非常に重要だと実感しました。

自社の課題に合った機械やシステムを導入できれば、業務効率は劇的に変わり、従業員の負担も減って成果につながります。『使って本当によかった』と心から思える制度ですので、悩んでいる経営者の皆さんもぜひ積極的に相談し、活用してみてください。」

鳥取県商工労働部企業支援課
(鳥取県持続的な賃上げ・生産性向上支援補助金事務局)

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